2018年1月10日 (水)

「正倉院文書」複製製作クラウドファンディングのおしらせ

世界最古にして最大級 1300年前の文書を未来へ
国立歴史民俗博物館 「正倉院文書」複製製作プロジェクト
2018年1月15日より「Readyfor」にてクラウドファンディングによる支援募集を開始

 このたび、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)では、2018年1月15日より、クラウドファンディングサー ビス「Readyfor」にて、「正倉院文書」の複製製作のための支援募集を開始いたします。

  今回のプロジェクトは、千葉銀行(頭取 佐久間 英利)と、「Readyfor」を提供するREADYFOR(レディーフォー)株式会社(代表取締役CEO 米良 はるか)の業務提携によりスタートするものです。貴重な文化財の保存と国内外での研究や展示に活用していくことを目的として、奈良県の東大寺正倉院に保管されてきた膨大な「正倉院文書」の精巧な複製を製作するための資金をクラウドファンディングにより調達する計画となっています。

 この複製製作は、①資料の保存(現物が劣化した場合に災害時のバックアップとして)、②公開 (実物はほとんど公開できない)、③研究(正確な複製を作っておけば、将来研究方法の進歩により、新しい発見につながる可能性がある)の観点から、大変意義が深いプロジェクトです。

  1300年前の日本最古の紙史料群「正倉院文書」は、東大寺の正倉院に伝えられた、紙史料として世界に類をみない貴重なものです。奈良時代の国家行政 から写経事業、役人の生活にいたるまで、いきいきと語りかけてくる希有な史料です。しかし、実物は年に一度、奈良国立博物館で開催される正倉院展でしかみることができず、万一災害にあえば、これらの過去の記録は失われてしまいます。

 本プロジェクトでは、東大寺正倉院に伝来した正倉院文書を国内外に広く公開すること、貴重な文化財を後世に伝えることを目的として、長期間の展示に耐えられる精巧な複製を製作いたします。

  世界的にも貴重な史料を、精巧な複製でもっと身近に、万一の災害にも備え、国立歴史民俗博物館では、35年にわたり全667巻5 冊の正倉院文書の内、390巻4冊の複製を製作してきました(文書複製は、残り277巻1冊)。 製作した複製は常設展での展示により、通年を通して閲覧でき、調査研究が可能です。クラウドファンディングにより、今回は「続々修第12帙第8巻」を複製し、複製の早期完了を目指します。

【「正倉院文書複製製作プロジェクト ~1,300年前の文書を未来へ~」概要 】
■プロジェクト名:半世紀に渡る歴博の挑戦!正倉院に残された古代の文書を後世へ
■プロジェクトページURL:
https://readyfor.jp/projects/rekihaku1
■目的:正倉院文書全巻(合計 667 巻 5 冊と東南院文書 112 巻を含む)の複製計画のうち、今回は「続々修第12帙第8巻」について、複製(長期の保存・利用、耐久性に優れた原色コロタイプ印刷により実行)を実施する
■掲載するサイト:クラウドファンディングサービスReadyfor(
https://readyfor.jp/
■製作完了予定日:2019年3月末日頃まで
■目標金額:350万円
■支援募集開始時期:1月15日
■支援募集期間:2018年3月30日(金)23時まで (74日間)

《複製方法について》 明治時代に写真技術を応用して生み出された複製技術のコロタイプで複製します。コロタイプは、撮影された写真 をそのまま原版とする印刷技法で、自然な濃淡や諧調の表現に優れており、その顔料インキの保存性の高さから、 国宝・重要文化財の絵画や書跡などの複製に利用され、文化財を後世に伝える役割を果たしてきました。

チームリーダー 仁藤 敦史(国立歴史民俗博物館研究部教授・総合研究大学院大学文化科学研究科教授(併任))。
コメント:正倉院文書複製事業について、私は歴博へ着任以来、四半世紀以上の間、担当を続けてきました。 その間に、全約 800 巻のうち 300 巻近い複製に立ち会いしました。近年の予算縮減により、全巻完成の目処に赤信号が点っている現在に強い危機意識を持っています。コロタイプ印刷の素晴らしさをご理解していただくとともに、複製事業に皆様のご協力をお願いします。

2017年12月25日 (月)

『正倉院写経所文書を読みとく』が刊行されました

正倉院文書の中心をなす〈写経所文書〉、その入門書が刊行されました。

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市川理恵著 『正倉院写経所文書を読みとく』

同成社、2017年12月発行、4,700円(税別)

http://www.douseisha.co.jp/book/b325181.html

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第1章「帳簿の実例」と、第2章「写経事業の紹介」の、2章構成となっています。

第1章では、写経所で用いられる帳簿のパターンをおさえてしまおう、というもの。複雑にみえる帳簿類ですが、基本的な型を理解すればとっつきやすくなります。実際の文書の様子を写真で確認しつつ読み進めることができ、頻出物品についても正倉院宝物から参考図版がふんだんに掲載されていて、イメージしやすく工夫されています。

第2章では、正倉院文書に見られる写経事業の展開過程を、具体的な事業ごとに整理して、個別に紹介していきます。各事業ごとに、その概要を説明する「解説」、関連する史料や便利な先行研究を紹介する「史料」、議論の焦点とされてきた問題点を論じる「研究動向」からなり、写経所文書研究の現在を手軽に知ることができます。

参考文献や索引も充実しており、写経所文書を読みとく際の〈辞典〉としても、活躍してくれることでしょう。

2017年10月30日 (月)

『正倉院文書研究』15号が刊行されました

会誌最新号が刊行されました。

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正倉院文書研究会編『正倉院文書研究』15号
吉川弘文館、2017年10月30日出版 定価:本体6,000円+税

http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b313253.html

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写経所の財源とその変遷                  市川理恵
東大寺所蔵経巻の検討
―「神護景雲二年御願経」と正倉院文書を手がかりに―
                                  矢越葉子
続々修第四十七帙第一巻の断片復原と基礎的考察  武内美佳
正倉院文書に見える奈良時代の軸について
―生産、供給と需要、流通と交易―
                                   長島由香
写経所における給食の復元                 三舟隆之
正倉院文書ワークショップ参加記             中村憲司
正倉院文書ワークショップ参加記             濱道孝尚
口絵 大般若経(魚養経)巻第二百五十一(解説)   野尻 忠

第36回定期研究会が開催されました

2017年10月28日(土)午後、東大寺総合文化センター・小ホールにおきまして、今年度の定期研究会が開催されました。

開会挨拶では代表の栄原永遠男氏から、会誌『正倉院文書研究』15号の刊行が報告されるとともに、本誌は査読誌であり、若手研究者にも積極的な投稿をお願いしたい旨が述べられました。

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第1報告大杉綾花氏「能恵所持大般若経と聖語蔵乙種第215号大般若経について」は、東大寺塔頭尊勝院の経蔵である聖語蔵に残された、239巻におよぶ経巻群の性格について検討するものでした。地獄からよみがえり大般若経の書写を完遂させたという、院政期の僧・能恵が書写した写経は、早くに散逸してしまいましたが、鎌倉時代になって東大寺でそれを書き継ぐ事業がおこなわれました。大杉氏は聖語蔵経巻の奥書の検討などから、この239巻の経巻群こそが能恵の写経を書き継いだものであるとする、刺激的な内容でした。

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第2報告の
濱道孝尚氏「奈良時代の仏教受容についての一考察―『法華経』関係論疏の書写を手がかりに―」は、法華経の各種注釈書が写経所でどのように書写されていたかという視点から、奈良時代における仏教受容の特質を明らかにしようとするものでした。特に女人救済への関心から『法華玄賛』が注目され、積極的に書写されたとの指摘は、興味深いものでした。

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第3報告の
山口英男氏「正倉院文書に見える「口状」について」は、「口状」という単語の意味を再検討するものでした。日本語辞典では「口上、口頭で述べること」などと説明されているのですが、正倉院文書での用例を検討していくと、口頭伝達の内容を聞き手側が書き取った書面と理解すべきであるとして、組織としての情報共有のあり方に再考をせまる内容でした。

今回の研究会は、正倉院展の初日にあわせ、ゆかりの深い東大寺境内を会場に開催されました。台風の影響が心配されたものの、約50名の参加者を得て、盛況のうちに終えることができました。

次回は2018年10月27日(土)、奈良女子大学で開催予定です。ぜひご予定ください。

2017年9月28日 (木)

古代史料が展示されます【終了しました】

秋の特別展が始まっています。各地で古代史料に触れることができます!ぜひお出かけください。

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香川県立ミュージアム
特別展「讃岐びと、時代を動かす ―地方豪族が見た古代世界―」

2017年10月7日(土)~11月26日(日)

http://www.pref.kagawa.jp/kmuseum/tenji/tokubetsuten/kaisai/
紫紙金字金光明最勝王経や山田郡田図、平城京木簡など、広く古代文字史料が展示されます。

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高岡市美術館
大伴家持生誕1300年記念 「家持の時代」展

2017年9月22日(金)~10月22日(日)

http://www.e-tam.info/index.html
越中国に関わる紙本の東大寺開田図や、家持自署のある太政官符なども展示されています。会期が短いので、ご注意ください。

2017年9月21日 (木)

第36回定期研究会のおしらせ

本年度の定期研究会は、下記のとおり開催する予定です。

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日時:2017年10月28日(土) 13:30~17:30
会場:
東大寺総合文化センター 小ホール(地下1階)【例年と異なります。ご注意ください】
〒630-8208 奈良市水門町100番地(東大寺境内・南大門入って左手)

http://culturecenter.todaiji.or.jp/

研究報告:
大杉 綾花「能恵所持大般若経補写事業と聖語蔵乙種第215号大般若経について」
濱道 孝尚 「法華経の受容の一考察 -論疏類の写経事業を通じてー(仮)」
山口 英男 「正倉院文書に見える「口状」について」
(以上、敬称略)
 17:40~18:00 総会
 18:30~   懇親会

※会員には、Eメール(9月15日送信)、または郵便(9月22日頃配達見込み)にて、案内文をお送りしております。もしいずれも届かないようでしたら、事務局までご一報ください。
※年会費納入につきましても、よろしくお願いいたします(当日のお支払いはご遠慮ください)。

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非会員の方のご参加も歓迎します(当日は会場整理費〈500円程度〉が必要です)。
正倉院展会期中のため、奈良市内での宿泊は混雑が予想されます。宿泊をご予定の方は、早めの確保をお願いします。
お問い合わせは正倉院文書研究会事務局まで。

2017年9月11日 (月)

福岡市博物館で鴻臚館特別展開催【終了しました】

福岡市博物館で、大宰府鴻臚館をテーマとした特別展が開催中です。尊経閣文庫所蔵の「買新羅物解」など見所が満載です。展示替えにご注意ください。

発見100年記念特別展
よみがえれ!鴻臚館 ―行き交う人々と唐物―

会期:2017年9月7日(木)~10月22日(日)

http://museum.city.fukuoka.jp/exhibition/tokubetsu2.html

発掘調査開始から30年になる記念特別展で、最新の発掘調査成果(建て替えの時期が見直されています)だけでなく、今回は唐物も一つのテーマになっております。

・国宝「唐人送別詩幷尺牘」園城寺【展示替え無し】
  …海商や唐僧が円珍に送ったもの。全二巻十八通一挙公開
・重文「買新羅物解」公益財団法人前田育徳会【9/12~10/9】
  …天平勝宝四年六月廿三日
・重文「美努岡万連墓誌」東京国立博物館【展示替え無し】
  …大宝年間の遣唐使
・重文「円仁入唐求法目録」京都国立博物館【途中展示替え】
  …日本国承和五年入唐求法目録
・重文「常暁請来目録」公益財団法人大和文華館【9/7~10/1】
  …冒頭~太元帥法請来部分
・重文「東征伝絵巻」(巻第四)唐招提寺
  【9/7~10/1】第三段 【10/3~10/22】第六・七段
  …鑑真の来日要請場面、大宰府到着の場面
・重文「高野大師行状図画」公益財団法人白鶴美術館【9/7~10/1】
  …第二巻「大師御入唐事」(空海入唐の場面)
鴻臚館跡出土木簡13点ほか

ほかにも正倉院宝物復元品や源氏物語大島本、京博の源氏物語絵色紙帖などの出品があります。

2017年5月 8日 (月)

正倉院文書の研究文献をお探しですか?

2015年より公開中の「正倉院文書マルチ支援データベース」(SHOMUS)ですが、データ数は現在も増え続けており、より便利なツールとして進化し続けています。今回はその中でも「研究文献検索」についてご紹介しましょう。
2017年4月現在で、360論文、累計4万2千件以上のデータが公開されています。今後も随時更新予定とのことです。

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「正倉院展で見たアノ巻物の中の、アノ文書について調べてみたいけど、どの論文を見ればいいのかな?」
そういう時に役立つのが「研究文献検索」です。「アノ文書」に言及している論文と、その言及箇所について、ピンポイントで教えてくれる優れものです。

東京大学史料編纂所ホームページ
(データベース検索→〔史料の所在〕正倉院文書マルチ支援データベース)
http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/shipscontroller

画面上方にある「研究文献検索」のボタンを押してみましょう。

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たとえば「続々修第3帙第1巻に関する研究論文」を調べたいと思ったら、【類別】欄で「続々修」を選び、【帙巻】欄に「0301」と入力して、【検索】をクリックします。

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すると、続々修第3帙第1巻に言及する論文の一覧が出て、論文中のどのページに記載があるかまで知ることができます。項目検索と組み合わせることで、さらに「この巻物の中のアノ文書」など、細かく対象を絞っていくことができます。
ぜひ一度お試しください!

2017年4月24日 (月)

『正倉院紀要』第39号が刊行されました

『正倉院紀要』第39号が刊行されました。
http://shosoin.kunaicho.go.jp/ja-JP/Bulletin 

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目次
正倉院南倉の銀壺について……………………………吉澤 悟
正倉院宝物の機器分析調査…………………………成瀬正和
年次報告
手実と端継―正倉院文書の成り立ち―………………佐々田悠
いわゆる因幡国戸籍の成立と伝来……………………渡辺晃宏

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 正倉院文書に関する論文が2本掲載されています。渡辺論文は因幡国戸籍についての詳細な観察報告です。内側に折られていたことや身分変動に伴う追記の意味を明らかにし,この帳簿が計帳歴名の原簿として「計帳の日」の人身把握に用いられた可能性に言及します。律令公文の新たな研究として注目されます。佐々田論文は手実帳の形態観察をもとに文書の成り立ちを考察したものです。手実にはかなりの割合で端継が転用されていて,巻末の端継は書写後に剥がされて経師の手実に,巻首の端継は最後の装丁段階で切断されて,案主によって帳簿に再利用されたことを論じています。人身把握と帳簿のあり方,写経行程と反故紙の発生など,古代の実情に迫るものとなっています。

 そのほか,吉澤論文は巨大な銀壺の技法や狩猟文について考察,日本製である可能性を指摘しています。成瀬論文は機器分析による科学的調査の内容と歩みを分かりやすく解説しており,近年の古文化財調査の手法を知る上でも必読です。
 年次報告では鳥毛篆書屏風や吹絵紙,最勝王経帙についての調査結果が示されています。

2017年2月17日 (金)

奈良国立博物館で正倉院文書を展示中【終了しました】

奈良国立博物館の名品展「珠玉の仏教美術」において、3月14日(火)まで、正倉院文書を展示しています。

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重要文化財「造東大寺司請経牒」1巻

 

写経所で五月一日経の勘経がおこなわれていた時期、平城京内の諸寺院にも勘経の分担を依頼(命令?)することがありました。この文書は、天平勝宝7歳(755)に、写経所の上級官司である造東大寺司が興福寺に宛てて出した牒で、五月一日経96巻分を勘経するため、図書寮経(唐経)の同一巻とともに興福寺へ引き渡すという内容です。(帙単位で渡したため、図書寮経のほうが数が多く、134巻になっている。合計230巻。)
宮崎健司「光明子発願五月一日経の勘経」(同『日本古代の写経と社会』塙書房、二〇〇六年)参照。奈良国立博物館『大遣唐使展』(図録、二〇一〇年)にも図版・解説が掲載されています。

 

そのほか名品展では、五月一日経・大般若経(魚養経)・紫紙金字金光明最勝王経など、いずれも正倉院文書との関連が深い奈良朝写経が展示されています。前述の造東大寺司請経牒も含め、これらは奈良博HP上の「収蔵品データベース」で、鮮明な画像と詳しい説明を見ることができます。
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2017mei/2017mei_101_shoseki.html
(目録「名称」の青い字をクリックすると、収蔵品データベースを参照できます)

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