2017年5月 8日 (月)

正倉院文書の研究文献をお探しですか?

2015年より公開中の「正倉院文書マルチ支援データベース」(SHOMUS)ですが、データ数は現在も増え続けており、より便利なツールとして進化し続けています。今回はその中でも「研究文献検索」についてご紹介しましょう。
2017年4月現在で、360論文、累計4万2千件以上のデータが公開されています。今後も随時更新予定とのことです。

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「正倉院展で見たアノ巻物の中の、アノ文書について調べてみたいけど、どの論文を見ればいいのかな?」
そういう時に役立つのが「研究文献検索」です。「アノ文書」に言及している論文と、その言及箇所について、ピンポイントで教えてくれる優れものです。

東京大学史料編纂所ホームページ
(データベース検索→〔史料の所在〕正倉院文書マルチ支援データベース)
http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/shipscontroller

画面上方にある「研究文献検索」のボタンを押してみましょう。

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たとえば「続々修第3帙第1巻に関する研究論文」を調べたいと思ったら、【類別】欄で「続々修」を選び、【帙巻】欄に「0301」と入力して、【検索】をクリックします。

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すると、続々修第3帙第1巻に言及する論文の一覧が出て、論文中のどのページに記載があるかまで知ることができます。項目検索と組み合わせることで、さらに「この巻物の中のアノ文書」など、細かく対象を絞っていくことができます。
ぜひ一度お試しください!

2017年4月24日 (月)

『正倉院紀要』第39号が刊行されました

『正倉院紀要』第39号が刊行されました。
http://shosoin.kunaicho.go.jp/ja-JP/Bulletin 

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目次
正倉院南倉の銀壺について……………………………吉澤 悟
正倉院宝物の機器分析調査…………………………成瀬正和
年次報告
手実と端継―正倉院文書の成り立ち―………………佐々田悠
いわゆる因幡国戸籍の成立と伝来……………………渡辺晃宏

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 正倉院文書に関する論文が2本掲載されています。渡辺論文は因幡国戸籍についての詳細な観察報告です。内側に折られていたことや身分変動に伴う追記の意味を明らかにし,この帳簿が計帳歴名の原簿として「計帳の日」の人身把握に用いられた可能性に言及します。律令公文の新たな研究として注目されます。佐々田論文は手実帳の形態観察をもとに文書の成り立ちを考察したものです。手実にはかなりの割合で端継が転用されていて,巻末の端継は書写後に剥がされて経師の手実に,巻首の端継は最後の装丁段階で切断されて,案主によって帳簿に再利用されたことを論じています。人身把握と帳簿のあり方,写経行程と反故紙の発生など,古代の実情に迫るものとなっています。

 そのほか,吉澤論文は巨大な銀壺の技法や狩猟文について考察,日本製である可能性を指摘しています。成瀬論文は機器分析による科学的調査の内容と歩みを分かりやすく解説しており,近年の古文化財調査の手法を知る上でも必読です。
 年次報告では鳥毛篆書屏風や吹絵紙,最勝王経帙についての調査結果が示されています。

2017年2月17日 (金)

奈良国立博物館で正倉院文書を展示中【終了しました】

奈良国立博物館の名品展「珠玉の仏教美術」において、3月14日(火)まで、正倉院文書を展示しています。

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重要文化財「造東大寺司請経牒」1巻

 

写経所で五月一日経の勘経がおこなわれていた時期、平城京内の諸寺院にも勘経の分担を依頼(命令?)することがありました。この文書は、天平勝宝7歳(755)に、写経所の上級官司である造東大寺司が興福寺に宛てて出した牒で、五月一日経96巻分を勘経するため、図書寮経(唐経)の同一巻とともに興福寺へ引き渡すという内容です。(帙単位で渡したため、図書寮経のほうが数が多く、134巻になっている。合計230巻。)
宮崎健司「光明子発願五月一日経の勘経」(同『日本古代の写経と社会』塙書房、二〇〇六年)参照。奈良国立博物館『大遣唐使展』(図録、二〇一〇年)にも図版・解説が掲載されています。

 

そのほか名品展では、五月一日経・大般若経(魚養経)・紫紙金字金光明最勝王経など、いずれも正倉院文書との関連が深い奈良朝写経が展示されています。前述の造東大寺司請経牒も含め、これらは奈良博HP上の「収蔵品データベース」で、鮮明な画像と詳しい説明を見ることができます。
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2017mei/2017mei_101_shoseki.html
(目録「名称」の青い字をクリックすると、収蔵品データベースを参照できます)

2016年11月21日 (月)

第35回定期研究会が開催されました

2016年10月29日(土)午後、奈良女子大学におきまして、今年度の定期研究会が開催されました。

第1報告の三舟隆之氏「写経所における給食の復元」は、食材や調理器具、食器についての史料を丹念に検討した上で、天平宝字6年の二部大般若経書写事業を例に古代の給食を復元したものです。実際に復元実験も行われており、支給量が一日の食料にしては多過ぎることから、余剰分が給与として支給されたとの見方を支持するなど、古代の下級官人の実態に迫る内容になっています。

第2報告の小倉慈司氏「宮内庁書陵部所蔵の奈良朝写経と聖語蔵」は、関係する手実や聖語蔵所蔵の僚巻などに言及しながら、書陵部所蔵の奈良朝写経の全体像を示したものです。五月一日経、神護景雲経、今更一部一切経や「中臣之寺」印を有する経巻があり、これらの多くが「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧」において画像公開されていることが紹介されました。画像は精細で大変見やすいものになっています。

第3報告の山下有美氏「天平勝宝2年~天平宝字2年の東大寺写経所と写書所」は、当該期の東大寺写経所と写書所について全面的に検討を加えたものです。両所が別組織であるとの山本幸男氏の指摘を踏まえ、案主や雑使の実態、発給文書について詳細に検討し、宝字2年の東大寺写経所は紫微中台管轄の写経機構として御願経を担ったことを明らかにし、さらに議論を場の問題に展開して、「経堂」と「書堂」を事務局と作業場とする理解を示しています。史料・表ともに豊富で、大変熱のこもった発表になりました。

第4報告の遠藤基郎氏「史料編纂所閲覧室での東南院文書の高精細画像の提供」は、学術創成研究費(田島公研究代表)によって撮影され、データベースが構築された東南院文書の公開について紹介したものです。現在、高精細の画像が史料編纂所の図書閲覧室の端末で公開されていることを、実演を交えながら報告していただきました。

今回の研究会はこれまでと異なり、奈良での開催でしたが、50名以上の方々にご参加いただき、盛況のうちに終えることができました。

次回は2017年10月28日(土)、東大寺総合文化センター 小ホールで開催予定です(東大寺南大門内、東大寺ミュージアムと同じ建物)。 ぜひご予定ください。

2016年9月 8日 (木)

第35回定期研究会のおしらせ【終了しました】

本年度の定期研究会は、下記のとおり開催する予定です。

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日時:
2016年10月29日(土) 13:30~17:40
会場:
奈良女子大学文学部N棟2階、N202教室 【例年と異なります、ご注意ください】
〒630-8506 奈良市北魚屋東町 近鉄奈良駅より徒歩5分 

http://www.nara-wu.ac.jp/nwu/intro/access/campusmap/index.html

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研究報告:
三舟 隆之「写経所に見える給食形態」(仮)
山下 有美「筆跡からみた天平宝字二年の写経所-案主・雑使・校生-」(仮)
小倉 慈司「宮内庁書陵部所蔵の奈良朝写経と聖語蔵」(仮)
遠藤 基郎「史料編纂所閲覧室での東南院文書の高精細画像の提供」
(以上、敬称略)
 17:40~18:00 総会
 18:30~    懇親会

※会員にはEメール、または郵送にて、案内文をお送りしています(10月2日頃着予定)。もしいずれも届かないようでしたら、事務局までご一報ください。
※年会費納入につきましてもよろしくお願いいたします(当日のお支払いはご遠慮ください)。

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非会員の方もご参加いただけます(当日は会場整理費〈500円程度〉が必要です)。
正倉院展会期中のため、奈良市内での宿泊は混雑が予想されます。宿泊をご予定の方は、早めの確保をお願いします。
お問い合わせは正倉院文書研究会事務局まで。

 

 

 

 

 

 

 

2016年9月 5日 (月)

三の丸尚蔵館で正倉院流出文書・奈良朝写経を展示【終了しました】

三の丸尚蔵館と宮内庁書陵部が所蔵する、書の名品を集めた展覧会が開催されます。時代順に3期に分けて展示されるので、奈良朝写経や正倉院流出文書(『正倉院文書拾遺』47写書所解)を見られるのは前期の1カ月弱のみです。忘れずにお出かけください!

 

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三の丸尚蔵館 第74回 展覧会 「書の美、文字の巧」

共催: 書陵部
会期:2016年9月17日(土)~12月4日(日)
 
前期:9月17日(土)~10月10日(月・祝) ←奈良~鎌倉の展示
 中期:10月15日(土)~11月6日(日)   ←南北朝~江戸
 後期:11月12日(土)~12月4日(日)   ←江戸~大正

http://www.kunaicho.go.jp/event/sannomaru/tenrankai74.htm

↓↓【出品作品リスト】

http://www.kunaicho.go.jp/event/sannomaru/tenrankai74-list.htmll

2016年7月13日 (水)

講演・シンポジウム「漢字文化の受容」が開催されます【終了しました】

奈良県立万葉文化館で講演会、奈良女子大学でシンポジウムが、連続して開催されます。特に後者では、書状という視点からみた正倉院文書をめぐる研究報告を聞くことができるようです。
一般参加の場合は申込手続き不要、研究者として参加の場合には8月16日までに申込みが必要です。詳しくは下記サイトをご覧ください。

http://www.nara-wu.ac.jp/kodai/wakate/wakate2016.pdf

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漢字文化の受容東アジア文化圏からみる手紙の表現と形式―

主催:奈良女子大学古代学学術研究センター
共催:奈良県立万葉文化館
    科学研究費基盤研究B「海外敦煌書儀・六朝尺牘文献の古代日本への受容実態の解明」
(代表:信州大学西一夫)

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公開講演会 日時:8月21日(日)13時~16時30分
         会場:奈良県立万葉文化館
         受付:12時30分~、無料
 
手紙の作法――書儀の実践・応用
    講師:京都大学非常勤講師 山本孝子氏
 
書の筆法から見る木簡・尺牘の世界
    講師:大東文化大学教授 河内利治氏

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シンポジウム 日時:8月22日(月)10時~16時
          会場:奈良女子大学文学系北棟202教室、無料
 
『杜家立成雑書要略』の書儀的表現
    報告者:信州大学教授 西一夫氏
 
書状と公文―正倉院文書の書状をめぐって―
    報告者:九州女子大学教授 奥田俊博氏
 
写経生・実務担当者の選択―「啓」という書式を選ぶ時―
    報告者:奈良学園大学教授 桑原祐子氏
 
古文書と古往来―日本の書札礼の周辺―
    報告者:関西大学教授 乾善彦氏
 
全体討論
    司会:奈良女子大学教授 奥村和美氏

2016年7月 6日 (水)

『正倉院文書の歴史学・国語学的研究―解移牒案を読み解く―』が刊行されました

正倉院文書のなかでも、もっとも難解な解移牒符案の論文集がでました。

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栄原永遠男編『正倉院文書の歴史学・国語学的研究―解移牒案を読み解く―』
和泉書院(日本史研究叢刊30)
2016年6月25日発売
ISBN:978-4-7576-0803-0 C3321
定価(税込)¥13,500

http://www.izumipb.co.jp/izumi/modules/bmc/detail.php?book_id=129083&prev=new

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目次
序―扉をすこし開けたこと―(栄原永遠男)
天平宝字期の解移牒案について(山下有美)
桴工達の訴え―下道主の文書作成の苦心―(中川ゆかり)
正倉院文書における文末の「者」(桑原祐子)
「并」字の使用法から文字の受容・展開を考える―「並」「合」との比較から―(方国花)
解移牒符案にみえる訂正方法とその記号について(井上幸)
正倉院文書における督促の表現―「怠延」を中心に―(根来麻子)
古代日本独自の用法をもつ漢語―「返却」「却還」「還却」「解却」―(宮川久美)
写経生の任用について(濱道孝尚)
正倉院文書にみえる浄衣(渡部陽子)
天平初期の帳簿―解移牒符案の源流を求めて―(栄原永遠男)
あとがき(桑原祐子)

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山下有美氏は天平宝字期の五通の解移牒案を詳細に比較・検討し、作成の経緯や目的を論述します。栄原永遠男氏は天平初期の帳簿の構成や作成の目的を検討し、天平宝字期の解移牒符案にどのように受け継がれたかを追究しています。
国語学からは、方国花氏が「并」字、井上幸氏が訂正符、根来麻子氏が「怠延」、宮川久美氏が「返却」「却還」「還却」「解却」の用法を調べ、その意義を論じています。また中川ゆかり氏は「偁」が「款」と訂正された理由を、桑原祐子氏は「文末の者」が使われた意味を検討しています。
歴史学からは、濱道孝尚氏が「試字」と貢進文から写経生の任用について考察し、渡部陽子氏が浄衣の支給と返却、その縫製や洗濯について細かく論述しています。

2016年5月30日 (月)

正倉院文書の連続講座が開かれます【終了しました】

『トンボの眼』において、本研究会から講師を派遣し、正倉院文書についての連続講座を開催いたします。

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入門解説・正倉院文書
第1回 8月28日(日) 正倉院文書入門(講師:仁藤敦史)
第2回 9月 4日(日) 正倉院文書と東アジア(講師:三上喜孝)
第3回 9月11日(日) 正倉院文書から延喜式へ(講師:小倉慈司)
第4回 9月25日(日) 聖武天皇のお葬式(講師:稲田奈津子)
第5回 10月2日(日) 正倉院文書の楽しさ(講師:山口英男)

いずれも 13時30分~15時30分、全5回、受講料あり
会場は東京都内区立施設の予定です

【詳しくはコチラ↓】
http://www.tonbonome.net/index.php?page=event_ev1608280
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ふるってご参加ください。

2016年5月24日 (火)

『正倉院紀要』第38号が刊行されました

正倉院のホームページにて、全文をPDFファイルで読むことができます。
http://shosoin.kunaicho.go.jp/ja-JP/Bulletin

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目次
特集 正倉院正倉整備工事 まえがき……………………杉本一樹
正倉院正倉整備工事の報告……………………………春日井道彦
正倉院正倉の奈良時代平瓦をめぐる諸問題…………岩永省三
年輪年代法による正倉院正倉の建築部材の調査(3)…光谷拓実
正倉院宝庫修理の歴史と自然災害……………………飯田剛彦
正倉の鎮守について……………………………………春日井道彦
年次報告

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今回の特集は、2011~14年におこなわれた正倉院宝庫の整備工事に際して、新たに得られた知見をまとめたものとなっており、読みごたえがあります。
春日井論文や岩永論文によると、平瓦の製作技法について、東大寺造営の頃には「桶巻作り」から「一枚作り」に移行していたとの「常識」に反し、今回の調査では、正倉院宝庫に残る奈良時代瓦の実に70パーセント以上が桶巻作りだったことが判明したそうです。それを瓦の状態の良し悪しによる残存率のなせる結果とみるか、東大寺造営に先行する建物からの再利用とみるか、あるいは製作技法の年代観自体を見直す必要があるのか。興味は尽きません。その他にも、奈良時代の瓦工たちの手の痕跡が瓦に鮮明に残されている様子は驚きですし、また整備後の宝庫屋根のどの部分にどの時代の瓦が葺かれているか、一目瞭然の挿図も興味深いものです(古い瓦を見たければ南面を見るべし!)。
飯田論文は、従来の研究では見逃されてきた鎌倉時代後期の修理についての史料を指摘するなど、新知見も多く交えながら、宝庫修理の歴史を描いていきます。近年特に注目される自然災害と文化財保護という視点からも、示唆するところの多い一文となっています。
年次報告では、正集に見える国印の印肉材の調査結果が示されています。

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