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2023年11月15日 (水)

第41回定期研究会が開催されました

2023年1028日(土)に、第41回定期研究会が開催されました。

                🌙

1報告の平山茉侑「聖武太上天皇の御葬と蓮華蔵世界往生」は、天平勝宝8歳(756)の聖武太上天皇の葬列に純金観世音菩薩像が加わっていたこと、観世音菩薩が蓮華蔵世界への往生を導く存在とされていたことから、聖武が菩薩として、みずからと民との蓮華蔵世界への往生を欣求していたと論じました。観音像が聖武の柩を先導する葬列は、地理的に東大寺大仏へ向かうことになり、聖武の蓮華蔵世界への往生を視覚化する演出であったとする指摘は、東大寺を会場に開催された今回の研究会参加者にとして、目に浮かぶような実感を覚えました。

2報告の佐々田悠「聖語蔵の成立について—近年の調査から―」は、今年3月に公表された経蔵「聖語蔵」にかかる調査成果(清水真一ほか「正倉院聖語蔵(旧尊勝院経蔵)調査報告」、星野安治「正倉院聖語蔵(旧尊勝院経蔵)の年輪年代」『正倉院紀要』第45号)を踏まえて、この新たな知見を紹介するとともに、経蔵としての聖語蔵、および経巻群としての聖語蔵の成立を史料から跡付けるものです。正倉院文書とのかかわりでは、現在の聖語蔵経巻に至る経巻群のいくつかの移動ルートが示されたことに加え、その過程で失われた奈良朝写経を補うために新たに書写・収集された経巻が乙種写経ではないかという指摘に興味を惹かれます。

3報告の栄原永遠男・渡部陽子・濱道孝尚「Shada(シャダ、写経所文書データベース)の作成とその経過」は、今年5月に公開された正倉院文書の新たなデータベースShadahttps://www.lit.osaka-cu.ac.jp/new-departure/project-shada/)の概要を紹介し、使用方法をデモンストレーションを通じて示しました。先行するSOMODAで採用した「短冊」単位での史料把握に加えて、個別写経事業研究の成果に基づき、その史料を形成した写経事業を明示する点が特徴です。今後も整備を進めていくとのことですが、Shadaを活用することで、その史料が属する個別写経事業や関連史料がたちどころに判明する点で画期的といえます。

4報告の山口英男「『正倉院文書目録』第9冊編纂トピック」は、今年3月に公刊された『正倉院文書目録』第9冊(続々修4(第1316帙))の紹介を兼ねて、原本調査によって判明した新たな知見を個別に取り上げました。第15帙第4巻②(7)裏~(5)裏では裏うつりした文字から新たな釈文が判明し、また裏面の糊跡から判明したもともとは器物に貼付されていた文書(第16帙第2巻・第7巻)の存在など、原本の観察によってしか知りえない情報を共有することは新たな研究の視角をもたらすことでしょう。

                🌙

今年は正倉院展も賑わいをとり戻していましたが、研究会の参加者も38名と盛況でした。

次回は、2024年11月2日(土)午後、奈良市内での開催を予定しております。

 ※例年より1週間遅い開催です。お間違いのないように。

2023年10月 5日 (木)

大谷大学博物館で奈良朝写経を展示(10月10日~)

奈良朝写経のほか中国・韓国・日本の各種大蔵経(一切経)なども展示します。

            🌙

大谷大学博物館 特別展「古典籍の魅力 2023」

会期: 2023年10月10日(火)~11月28日(火)

https://www.otani.ac.jp/events/2023/sfpjr700000104ia.html

            🌙

開館20周年記念、宗祖親鸞聖人誕生850年・立教開宗800年記念として、館蔵の重文10件とそれに関わる作品を中心に展覧会を開催しています。

奈良朝写経関係では、『判比量論』断簡(大谷大学博物館 11/728)、『法華経』巻第三断簡(京都大学附属図書館 11/728)、『浄名玄論』巻第四(京都国立博物館 11/718)・同第六(京都国立博物館 11/1828)、光明子発願一切経『瑜伽師地論』巻第三十七(大谷大学博物館)、光覚知識一切経『衆事分阿毘曇論』巻第九(大谷大学博物館)を展示。また奈良朝写経を本経とした石山寺校倉聖教『如意輪陁羅尼経』(石山寺 11/728)や正倉院文書の流出文書である「造仏所作物帳」断簡(奈良国立博物館 11/728)も展示。

また宗祖にかかわり親鸞筆『教行信証』坂東本(東本願寺)、「親鸞聖人像(熊皮御影)」(奈良国立博物館 11/728)などを、京都大蔵会開催担当校にかかわり宋版大蔵経・高麗版大蔵経(再雕本)・北京版西蔵大蔵経・法隆寺一切経・松尾社一切経・金峯山一切経・神護寺一切経(大谷大学図書館・博物館)・同経帙などをそれぞれ展示します。

2023年9月27日 (水)

第41回定期研究会のおしらせ【終了しました】

本年度の定期研究会は、下記のとおり開催いたします。皆様お誘い合わせの上、ご参加ください。

                     🐱

日時:2023年10月28日(土) 13:00~16:30
会場:東大寺総合文化センター小ホール(奈良市水門町100番地)
    ※東大寺南大門を入ってすぐ左手の建物です。
     アクセスマップ→http://www.netz.co.jp/joruri/kinsyouhoru.pdf

                     🐱

研究報告:
平山茉侑「聖武太上天皇の蓮華蔵世界往生と御葬」(仮)
佐々田悠「聖語蔵の成立について―近年の調査から」

栄原永遠男・渡部陽子・濱道孝尚「ShaDa(シャダ、写経所文書データベース)の作成とその経過」
山口英男「『正倉院文書目録』九刊行報告」 
            (順不同 敬称略)
16:20~16:30 総会
※懇親会はありません。

研究会に参加される場合は、下記研究会事務局アドレスへ10月20日(金)迄にご連絡ください(会員・非会員とも)。
shosoinkenkyukai★gmail.com(★を@に代えてください)

※会員にはEメールにて案内文をお送りしております。
※年会費納入につきましてもよろしくお願いいたします(当日のお支払いはご遠慮ください)。

                     🐱

非会員の方のご参加も歓迎いたします(当日は会場整理費〈500円程度〉が必要です)。
正倉院展会期中のため、奈良市内での宿泊は混雑が予想されます。宿泊をご予定の方は、早めの確保をお願いします。
お問い合わせは、正倉院文書研究会事務局までお気軽に。
 shosoinkenkyukai★gmail.com(★を@に代えてください)

2023年9月 7日 (木)

西川明彦著『正倉院のしごと 宝物を守り伝える舞台裏』のご紹介

中公新書より、西川明彦氏(正倉院事務所前所長)の著書が刊行されました。

      🌀   🌀   🌀 

『正倉院のしごと 宝物を守り伝える舞台裏』

西川明彦著 2023年3月刊行 定価990円(税込)

ISBNコード ISBN978-4-12-102744-3

正倉院のしごと -西川明彦 著|新書|中央公論新社 (chuko.co.jp)

      🌀   🌀   🌀 

正倉院の営みを、保存・修理・調査・模造・公開に分けて紹介しています。
たとえば正倉院は「シルクロードの終着駅」といわれるので多くの人が誤解していますが、実は9割以上は国産品であることや、正倉院宝物の保存は黴(カビ)との闘いであり、さらに害虫駆除、有機酸からの防御が大事で、具体的にどういう対策をとっているのかを紹介しています。
正倉院の開封については、織田信長も勅封制度を尊重して正式な手続きを経ていたこと、第二次世界大戦後にGHQが奈良時代の戸籍を見せよと迫った際に、正倉院関係者が命がけで入庫を拒否し、最終的にはGHQと覚書を交わすことになった経緯など、興味深い話題が満載です。

2023年8月25日 (金)

善光朱印経や百万塔陀羅尼を展示中【終了しました】

静嘉堂文庫美術館の展覧会で、善光朱印経、百万塔陀羅尼が展示されています。

              ⚡

静嘉堂文庫美術館展覧会「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」

2023年8月11日(金)~9月24日(日)

休館日 毎週月曜日、9月19日(火)   9月18日(月・祝)は開館。

開館時間 10:00~17:00(金曜日は10:00~18:00)※入館は閉館の30分前まで。

※混雑が予想されますので、来館日時指定予約にご協力をお願いします。

https://www.seikado.or.jp/exhibition/current_exhibition/

              ⚡ 

善光朱印経は奈良時代後期を代表する古写経で、尾題の下に「善光」の朱印が捺されています。静嘉堂所蔵の「増壱阿含経 巻二二」は、巻末の校経列位によって天平宝字三年(759)十一月四日に三嶋岡麻呂によって書写されたことがわかります。百万塔は称徳天皇が天平宝字八年(764)の藤原仲麻呂の乱後の動乱を鎮めるために発願した100万基の小塔のことで、そのなかに世界最古の印刷物といわれる「陀羅尼経」が入っています。

2023年8月 2日 (水)

2023年度 第75回 正倉院展 が開催されます【終了しました】

奈良博サイトで、2023年度正倉院展の情報が公開されています。

             ✨

会  期:2023年10月28日(土)~11月13日(月)※会期中無休

開館時間:午前8時~午後6時 ※例年とは異なります

     ※金・土・日曜日、祝日は午後8時まで

予  約:観覧には原則、事前予約制の「日時指定券」の購入が必要です

     詳細は下記の奈良博サイトでご確認ください

(奈良博・正倉院展サイト)

https://www.narahaku.go.jp/exhibition/special/special_exhibition/202310_shosoin/

             ✨  

今回の展示では、(狭義の)正倉院文書としては、正集 第7巻・第18巻・第20巻、続修別集 第1巻、塵芥文書 第32巻、続々修 第18帙第3巻の、合計6巻が展示される予定です。

 

このうち、塵芥文書 第32巻については、11月4日(土)に下記の公開講座が開かれます。

 三野拓也氏(宮内庁正倉院事務所保存課調査室員)「正倉院文書の復原―いわゆる「常陸国戸籍」について―」

 ※事前申込が必要です。詳細は上記の奈良博サイトでご確認ください。

 

宮内庁正倉院事務所HPのマイクロフィルム画像(正倉院宝物検索の文書検索)、および東京大学史料編纂所HPの正倉院文書マルチ支援データベース(断簡ごとの釈文を見ることもできます)は使いこなしておられますか?以下に展示予定巻の該当部分リンクを記しておきますので、ぜひご活用ください。

 

正集第7巻

(画像)https://shosoin.kunaicho.go.jp/documents?id=0000011067&index=6

(DB)https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w49/search?expand=true&seriesclass=1%EF%BC%9A%E6%AD%A3%E9%9B%86&chitsukan=7&page=1&itemsperpage=200&sortby=abbreviated_id&sortdesc=false&sortitem=%E6%96%AD%E7%B0%A1ID%EF%BC%9A%E6%98%87%E9%A0%86

 

正集第18巻

(画像)https://shosoin.kunaicho.go.jp/documents?id=0000011078&index=16

(DB)https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w49/search?expand=true&seriesclass=1%EF%BC%9A%E6%AD%A3%E9%9B%86&chitsukan=18&page=1&itemsperpage=200&sortby=abbreviated_id&sortdesc=false&sortitem=%E6%96%AD%E7%B0%A1ID%EF%BC%9A%E6%98%87%E9%A0%86

 

正集第20巻

(画像) https://shosoin.kunaicho.go.jp/documents?id=0000011080&index=18

(DB)https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w49/search?expand=true&seriesclass=1%EF%BC%9A%E6%AD%A3%E9%9B%86&chitsukan=20&page=1&itemsperpage=200&sortby=abbreviated_id&sortdesc=false&sortitem=%E6%96%AD%E7%B0%A1ID%EF%BC%9A%E6%98%87%E9%A0%86

 

続修別集第1巻

(画像) https://shosoin.kunaicho.go.jp/documents?id=0000011199&index=0

(DB)https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w49/search?expand=true&seriesclass=4%EF%BC%9A%E7%B6%9A%E4%BF%AE%E5%88%A5%E9%9B%86&chitsukan=1&page=1&itemsperpage=200&sortby=abbreviated_id&sortdesc=false&sortitem=%E6%96%AD%E7%B0%A1ID%EF%BC%9A%E6%98%87%E9%A0%86

 

塵芥文書第32巻

(画像) https://shosoin.kunaicho.go.jp/documents?id=0000011280&index=31

(DB)https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w49/search?expand=true&seriesclass=5%EF%BC%9A%E5%A1%B5%E8%8A%A5&chitsukan=32&page=1&itemsperpage=200&sortby=abbreviated_id&sortdesc=false&sortitem=%E6%96%AD%E7%B0%A1ID%EF%BC%9A%E6%98%87%E9%A0%86

 

続々修第18帙第3巻

(画像) https://shosoin.kunaicho.go.jp/documents?id=0000011500&index=5

(DB)https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w49/search?expand=true&seriesclass=6%EF%BC%9A%E7%B6%9A%E3%80%85%E4%BF%AE&chitsukan=1803&page=1&itemsperpage=200&sortby=abbreviated_id&sortdesc=false&sortitem=%E6%96%AD%E7%B0%A1ID%EF%BC%9A%E6%98%87%E9%A0%86

2023年7月12日 (水)

奈良女子大学古代学・聖地学研究センター講演会のおしらせ【終了しました】

奈良女子大学古代学・聖地学研究センターで、正倉院文書にも関わる講演会が行われます。

詳細はコチラ⇒ http://www.nara-wu.ac.jp/nwu/news/2023news/pdf/20230704_1.pdf

対面参加のみの開催で、事前申込が必要です(8月21日締切)。申込方法は上記URLでご確認ください。

                 🐶

第19回「若手研究者支援プログラム」 下級官人の文学

主 催 奈良女子大学古代学・聖地学研究センター

共 催「敦煌書儀・六朝尺牘文献の古代日本への受容実態の展開」(代表:信州大学 西一夫)
  「平安期における古代漢文学の質的変容解明にむけた空海作品からのアプローチ」(代表:筑波大学 谷口孝介)
  「歌における説話的意匠の形成」(代表:淑徳大学 白井伊津子)

日 時 令和 5 年 8 月 28 日(月)

会 場 奈良女子大学 文学部N棟 202 教室
 ※オンライン形式の併用はいたしません。対面のみです。一般来聴歓迎します。
 ※感染症の流行状況によっては、大幅に予定を変更することもございます。変更する場合は、奈良女子大学HP 上にてお知らせいたします。

講 演(無料) 10 時 30 分~17 時(入場 10 時~)
 古代下級官人の実態 鹿児島大学名誉教授 虎尾達哉
          (昼休み)
 下級官人の文筆の諸相 ―正倉院文書の場合― 奈良学園大学名誉教授 桑原祐子
 上代における一般識字層の漢文作品の特質―「那須国造碑」の表現を通して― 梅花女子大学教授 三木雅博

 ・司 会:奈良女子大学教授 奥村 和美

2023年6月19日 (月)

根津美術館で「大方広十輪経 巻第四」(五月一日経)が展示中【終了しました】

根津美術館(東京都港区)の企画展「救いのみほとけ―お地蔵さまの美術ー」において五月一日経が展示されています。
会期:2023年5月27日(土)~7月2日(日)
オンラインによる日時指定予約入館券のご購入をお願いいたします
展覧会 / 開催中|根津美術館 (nezu-muse.or.jp)

「大方広十輪経」は中国に地蔵信仰が広がるきっかけとなったお経です。
今回展示されているのは、天平十二年(740)五月一日付の願文が記された五月一日経です。
光明皇后の写経所において書写されたもので、底本は玄昉将来経であったと思われます(『大日本古文書』7ノ71)。

2023年5月18日 (木)

『正倉院紀要』第45号が刊行されました

『正倉院紀要』第45号が刊行されました。下記サイトから全文閲覧可能です。

https://shosoin.kunaicho.go.jp/bulletin/

                 ☀
**** 目次 ****

正倉院聖語蔵(旧尊勝院経蔵)調査報告……清水真一・藤井恵介・春日井道彦・中西将

正倉院聖語蔵(旧尊勝院経蔵)の年輪年代……星野安治

中世の経蔵における聖教・文書の収納状況……藤井恵介

正倉院漆六角厨子復原考察……大野敏

正倉院の絹の分子量……中村力也

年次報告

いわゆる「常陸国戸籍」について……三野拓也

                 ☀

五月一日経や今更一部経を含む『聖語蔵経巻』を収蔵していた聖語蔵(旧尊勝院経蔵)について、3本の論文が収載されています。

聖語蔵はもとは東大寺境内西北隅部に位置する尊勝院経蔵でしたが、明治29年(1896)ごろに内部に収められていた経巻類とともに皇室に献納され、現在地に移築されました。「正倉院聖語蔵(旧尊勝院経蔵)調査報告」は令和2年度正倉院特別調査として実施した聖語蔵の構造調査(建造物調査)の報告です。尊勝院の沿革、聖語蔵の建立と修理・移築について概括し、建築の形式・技法を詳細に検討しています。

「正倉院聖語蔵(旧尊勝院経蔵)の年輪年代」では、校木・軒天井・台輪・棚板の計55点の年輪年代を特定しました。すなわち聖語蔵の建造物部材は1235年以降それほど経たない時期、内部経棚の棚井板は1126年以降それほど経たない時期にそれぞれ伐採された木が使われたことが判明しました。

国内に現存する古代・中世の経蔵では経を納めた経棚はほぼすべて失われていますが、聖語蔵では入口の扉を除いて、内側の壁の全面に沿って経棚が設置されています。「中世の経蔵における聖教・文書の収納状況」では、春日大社一切経経蔵・醍醐寺経蔵・般若寺経蔵・藤原頼長の文倉の内部構造や収納状態と比較したうえで、聖語蔵では棚の間隔がほぼ同じであるため、比較的低い経箱に収められた聖教を収納することが想定されていたこと、また最下段は高さが大きいので櫃が置かれてたことが推定されると述べています。

「正倉院漆六角厨子復元考察」は朽損によって部材片となった漆六角厨子を、調査と復元考察によって、その具体的形態をあきらかにしています。「正倉院の絹の分子量」では絹フィブロインの分子量の測定した結果、正倉院の絹染織品は目視ではしっかりした形を保っているものの、フィブロインは低分子化しており、物性が低下し、脆弱な状態にあることを述べています。

「いわゆる「常陸国戸籍」について」は、塵芥文書第三十二巻の第一紙から第六紙、および二十九片の紙片からなる雑張に整理される、平安時代初期(弘仁14年(823)以降)の常陸国の戸籍についての論考です。杉本一樹「常陸国戸籍の復原と翻刻」(『日本古代文書の研究』吉川弘文館、2001所収)の復原案を再検討し、湿損による破損やシミ、そして墨移りを手がかりに、新たな復原案を提示しています。

五月一日経願文に関する研究がWEB公開されました

『東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信』第99号が東京大学学術機関リポジトリで公開されました。

市川理恵「静嘉堂所蔵『仏説中心経』と五月一日経願文」が掲載されています。

https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/2007507

 

願文に日付がない『仏説中心経(五月一日経)』、願文そのものがない五月一日経、願文の日付が間違っている五月一日経を鮮明な画像とともに紹介し、五月一日経書写の過程や意義について論じています。

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