2024年11月27日 (水)

第42回定期研究会が開催されました

2024112日(土)に、第42回定期研究会が開催されました。

1報告の阿部栞央報告「正倉院文書にみえる「人名+所」の基礎的考察」は、正倉院文書に多くあらわれる僧尼の「所」が多様な要素を含みつつ僧尼の居所・集団を指すことを論じました。「所」を代表しうるのは受戒した僧尼に限られており、寺院内の特定僧侶の「所」には従僧が付いていたこと、そして従僧であった沙弥が受戒し比丘となると自ら「所」を持つようになり集団を再生産することなど、僧侶の活動形態を浮かび上がらせる興味深い指摘がなされました。

2報告の矢越葉子報告「写経帳簿からみた敦煌文書」は、敦煌文書のコレクションごとに含まれる文書の種類が異なる分布を見せることが、蔵経洞内のどこから文書を持ち出したかに起因することを論じ、写経事業に関する帳簿・記録と書き損じにより廃棄された兌廃稿がそれぞれ蔵経洞内にどのようにまとめられていたのかを推定しました。敦煌文書がどのようにしてそこに置かれたのか、当時の姿が見えてくるような研究でした。

3報告の内田敦士報告「正倉院文書と仏教儀礼」は、正倉院文書にみえる経典の貸出記録などから、当時の僧侶らが仏教儀礼に関係する経典を比較・研究しようとしていたことを論じました。中国で行われた儀礼よりも経典に記された儀礼を取り入れようとしたという指摘や、道鏡が経典を通じてインドの仏教儀礼を志向していたとの展望は、今後の儀礼研究にも関わる論点といえるでしょう。

4報告の市川理恵・吉田恵理報告「静嘉堂所蔵「仏説中心経」と民屯麻呂の筆跡」は、願文の記載や、「内家私印」押捺の意味を検討し、さらに書写者の民屯麻呂が正倉院文書において「仏説中心経」を書写した記録のある民長麻呂と同一人物であることを筆跡から解明して、当該経典が光明皇后発願の五月一日経であることを示しました。1000年以上残されてきた五月一日経の一巻が再び「発見」されたことは、大変貴重な成果です。

突然の大雨に、会場近くの南大門前が水浸しになったり、新幹線がとまったりとハプニングが続きましたが、研究会には46名の参加があり、また久々に再開した懇親会も大変な盛況でした。

次回は、2025年10月25日(土)午後、奈良市内での開催を予定しております。

2024年10月15日 (火)

NHK「正倉院の扉」スペシャル版放映【終了しました】

「正倉院の扉」の第1~5回までをまとめたスペシャル版が

【NHK総合テレビ】10/19(金)午前5:10~5:35

で全国放送されます。

正倉院宝物をめぐっては、公開と文化財保存との間で重要な局面を迎えつつあります。スペシャル版では正倉院事務所前所長の西川明彦さんによるスタジオコメントも追加されているとのことです。 

2024年9月26日 (木)

2024年度定期研究会のおしらせ

2024年度(第42回)定期研究会は、下記のとおり開催いたします。皆様お誘い合わせの上、ご参加ください。

                     🐱

日時:2024年11月2日(土) 13:00~16:30
会場:東大寺総合文化センター小ホール(奈良市水門町100番地)
    ※東大寺南大門を入ってすぐ左手の建物です。

     アクセスマップ→http://www.netz.co.jp/joruri/kinsyouhoru.pdf

                     🐱

研究報告
阿部栞央「正倉院文書における「人名+所」の基礎的考察」
内田敦士「正倉院文書と仏教儀礼」
市川理恵・吉田恵理「静嘉堂所蔵「仏説中心経」と民屯麻呂の筆跡」
矢越葉子「写経帳簿からみた敦煌文書―正倉院文書との比較を通じて―」(仮) 

                       (順不同 敬称略)
16:20~16:30 総会
17:00~ 懇親会 チャイナダイニング 飛天(奈良県奈良市東向南町26)

研究会に参加される場合は、以下のリンク先の参加申込フォームからお申込みください。
【 10月28日(月)締切 】

参加申込フォーム: https://forms.gle/XJA94JfmoDWBWEf47  

※会員にはEメールにて案内文をお送りしております。
※年会費納入につきましてもよろしくお願いいたします(当日のお支払いはご遠慮ください)。

                     🐱

非会員の方のご参加も歓迎いたします(当日は会場整理費〈500円程度〉が必要です)。
正倉院展会期中のため、奈良市内での宿泊は混雑が予想されます。宿泊をご予定の方は、早めの確保をお願いします。
お問い合わせは、正倉院文書研究会事務局までお気軽に。
 shosoinkenkyukai★gmail.com(★を@に代えてください)

2024年9月20日 (金)

五島美術館〔館蔵〕秋の優品展「一生に一度は観たい古写経」【終了しました】

五島美術館と大東急記念文庫の古写経の名品を展示しています。

 

五島美術館 〔館蔵〕秋の優品展「一生に一度は観たい古写経」

会期:2024年9月3日(火)~10月14日(月)

https://www.gotoh-museum.or.jp/event/open/

 

下記の奈良時代古写経が展示されます。

※前期展示(93日~923日)、後期展示(925日~1014日)

 

 大般若経 巻第二百四十八(長屋王願経・和銅経)《前期展示》

 大般若経 巻第三百四十三(長屋王願経・和銅経)《後期展示》

 金光明最勝王経 巻第十

 註楞伽経 巻第七(五月一日経)《前期展示》

 得無垢女経(五月一日経)《後期展示》

 優波離問仏経(五月一日経)《後期展示》

 般若心経(隅寺心経)

 法華経堤婆達多品第十二(藤南家経)《後期展示》

 中阿含経 巻第三十四(善光朱印経)

 大般若経 巻第四十三(行信経)

 仏説灌頂三帰五戒帯佩護身呪経(称徳天皇勅願一切経)《後期展示》

 十誦律第三誦 巻第十七(称徳天皇勅願一切経)《前期展示》

 大般若経 巻第百・五百二十(薬師寺経・魚養経)

 紫紙金字華厳経 巻第六十一

 紫紙金字華厳経 巻第六十四

 紺紙銀字華厳経 巻第五十(二月堂焼経)

 続華厳経略疏刊定記 巻第五《前期展示》

2024年9月18日 (水)

『翻刻・影印 天平諸国正税帳』が2024年11月1日に発売予定です

『翻刻・影印 天平諸国正税帳』

【編者】鈴木靖民・佐藤長門
【執筆者】荒井秀規・榎 英一・早川万年・山﨑雅稔
本体15,000円+税
2024年11月1日刊行予定
A5判・上製・函入・2分冊・538頁(予定)
ISBN 978-4-8406-2267-7

https://catalogue.books-yagi.co.jp/books/view/2372

長らく品切で、復刊が期待されていた林陸朗・鈴木靖民編『復元 天平諸国正税帳』(1985年、現代思潮社)を全面改訂したものです。
奈良時代の正倉院文書に残る収支計算書「正税帳」全27通を翻刻し、詳細な注釈をくわえ、別冊に影印を付しています。全国の地方財政・特産物・交通手段・産業、さらにはパンデミックによる救済措置・被害状況まで、奈良時代の社会情勢が全国規模でわかる貴重史料となっています。

本書の特長は、翻刻編にくわえ、旧版『復元 天平諸国正税帳』にはなかった影印編との2分冊としたことです。
翻刻編では、厳密に校訂した翻刻本文、最新成果を踏まえた脚註・語句解説・詳細な史料語句索引、さらには正倉院文書(正税帳)断簡整理・表裏対照表も併載しています。
また影印編では、正税帳全27点の写真、カラー口絵5点、さらには影印本文では確認できなかった箇所の4点について透過光写真を併載しています。
そして、翻刻編・影印編は2分冊としたのも大きな特長です。本文には行番号を付しているので、翻刻編と影印編を並べて瞬時に見比べることができます。

ぜひご一読ください。

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2024年9月 4日 (水)

公開講演会「忘れられた東アジアの古代塗料「金漆」の復元研究」のおしらせ【終了しました】

『東大寺献物帳(国家珍宝帳)』に記された大仏への献納品リストには「金漆」の記述が数多く登場します。「金漆」は金属等に塗られた塗料で、現存する正倉院宝物にも塗られている可能性が高いのですが、その製法や使用法は現在に伝わらず、謎の多い存在でもあります。

小倉慈司氏(国立歴史民俗博物館)を代表とする科学研究費(挑戦的研究・萌芽)「忘れられた東アジアの古代塗料「金漆」の復元研究」では、文献史学・植物学・化学・工芸学の研究者と漆芸家とが共同で「金漆」の復元研究を進めています。その成果が公開講演会で披露されます。

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

公開講演会「忘れられた東アジアの古代塗料「金漆」の復元研究」

日時  2024年9月29日(日)11:00~17:00

場所  明治大学駿河台キャンパス アカデミーコモン8階 308E教室、オンライン

参加費 無料

主催  科研費挑戦的研究(萌芽)「忘れられた東アジアの古代塗料「金漆」の復元研究」(代表:小倉慈司)JSPS22K18491

参加申込 下記URL(歴博サイト)をご参照ください

     https://www.rekihaku.ac.jp/research/event/20240929_lecture.html

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

【プログラム】

本間幸夫(漆芸家)「金漆との出会いから」

小倉慈司 (国立歴史民俗博物館)「古代史料に見える「金漆」」

稲田奈津子(東京大学史料編纂所)「発見された黄漆―韓国における研究・活用について」

宮腰哲雄(明治大学)「金漆の特性と科学分析」

能城修一(明治大学研究・知財戦略機構)「東アジアに生育するカクレミノとウコギ科植物」

小林和貴(東北大学学術資源研究公開センター)「ウコギ科 3 樹種の樹皮の組織構造」

本多貴之(明治大学理工学部)「金漆樹液の化学分析」

西川明彦(宮内庁正倉院事務所)「正倉院宝物にみる金漆」

討論

2024年7月 8日 (月)

第42回定期研究会の予告

2024年度定期研究会は、下記の日程で開催いたします。
研究会終了後には懇親会も予定しております。ふるってご参加ください。
正倉院展もあり、奈良は大変混雑する時期です。
宿泊をされる場合には、早めに宿舎を確保されることをお勧めいたします。
          *  *
日 時:2024年11月2日(土)午後1時より
場 所:東大寺総合文化センター(奈良市)
報 告:
阿部栞央「正倉院文書における「人名+所」の基礎的考察」
市川理恵・吉田恵理「静嘉堂所蔵「仏説中心経」と民屯麻呂の筆跡」
内田敦士「正倉院文書と仏教儀礼」
矢越葉子「日中写経所文書の比較検討」
              (順不同、敬称略、いずれも仮題)

2024年7月 5日 (金)

静嘉堂古写経群の調査報告書がオンライン公開されました

静嘉堂(三菱・岩崎家)コレクションには、多くの貴重な古写経が含まれています。このたび、2021年度東京大学史料編纂所一般共同研究「静嘉堂所蔵古写経群の研究資源化」として、これら古写経群の調査・撮影を実施しました。その成果をまとめた報告書が、静嘉堂文庫美術館のサイトよりオンライン公開されました。

                         ♦        ♦        ♦

https://www.seikado.or.jp/about/bulletin/

東京大学史料編纂所研究成果報告書2023-3/(公財)静嘉堂調査報告書

静嘉堂所蔵古写経群の研究資源化プロジェクト編『静嘉堂所蔵古写経群の調査と研究』

                         ♦        ♦        ♦

長屋王願経・永恩具経・五月一日経・善光朱印経・神護景雲経・隅寺心経・安倍小水麻呂経、妙法蓮華経変相図として知られる宋代写経など、バラエティ―に富む古写経群について、精細な撮影画像や計測データなどとともに、一点ずつ解説しています。

『静嘉堂研究紀要』第2号には、上記共同研究の成果をふまえた論文2件が掲載されています。あわせてご参照ください。

https://www.seikado.or.jp/about/bulletin/  (同上サイト)

 市川理恵「静嘉堂所蔵の三点の註楞伽経断簡について」

 浦木賢治「静嘉堂所蔵古写経群の伝来─明治時代の松浦武四郎ほか」

2024年6月19日 (水)

『正倉院紀要』第46号が刊行されました

『正倉院紀要』第46号が刊行されました。下記サイトから全文閲覧可能です。

https://shosoin.kunaicho.go.jp/bulletin/

**** 目次 ****

瑠璃小尺と瑠璃魚形の再現模造……迫田岳臣

紫檀塔残欠について……春日井道彦

正倉院宝物の修理における合成樹脂の使用について……片岡真純

正倉院の虫害対策……髙畑誠

年次報告

 

「年次報告」では、聖語蔵経巻(乙種写経215号大般若経)の後半部分についての調査報告もなされています。

2024年5月24日 (金)

2024年度定期研究会の予告

今年度の定期研究会は、下記の日程・場所で予定しています。

日時:2024年11月2日(土)午後

場所:奈良市内

インバウンドの影響もあり、年々宿泊の確保が難しくなっております。

遠方からご参加の場合は、早めの確保をお願いいたします。

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