『正倉院紀要』第36号が刊行されました
正倉院のホームページにて、全文をPDFファイルで読むことができます。
正倉院HPhttp://shosoin.kunaicho.go.jp/shosoinPublic/top.do
目次
乾漆伎楽面の報告にあたって…………………………成瀬正和
正倉院乾漆伎楽面の構造・技法についての研究
―試作・実験による考察―………………山﨑隆之・岡田文男
乾漆製伎楽面の製作技法
―乾漆第20号を中心として―……………………山片唯華子
正倉院所在の法隆寺献納宝物染織品
―錦と綾を中心に―………………………………沢田むつ代
年次報告
年次報告では、新たな発見として、幡の脚端飾りに用いた錦の裏打ちとして使用された、幡製作に関する文書を紹介しています。また薬袋に残る墨書についても報告されています。
沢田論文が扱うのは、正倉院に残された法隆寺裂。明治の廃仏毀釈の風潮のなか、法隆寺の寺宝は皇室へと献納され、一時的に正倉院に仮納された後、東京の博物館へと移されました。ところが正倉院から搬出する際、染織品を納めた櫃が取り違えられ、法隆寺献納宝物の一部が正倉院に残り、正倉院宝物の一部が法隆寺献納宝物とともに東京に運ばれてしまいます。その後、それぞれ整理作業が進められて、今ではすっかり混ざってしまいました。本稿では宝物写真による詳細な調査から、正倉院所在の染織品から法隆寺由来のものを判別するという、興味深い内容です。今後は献納宝物から正倉院裂を明らかにする予定とあり、期待が高まります。