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2021年5月29日 (土)

『正倉院紀要』第43号が刊行されました

『正倉院紀要』第43号が刊行されました。下記サイトから全文閲覧可能です。

https://shosoin.kunaicho.go.jp/bulletin/

 

**** 目次 ****

正倉院宝物特別調査 筆調査報告……日野楠雄・荒井利之・橋本貴朗・藤野雲平・向久保健蔵

正倉院所蔵の巻筆と書蹟……荒井利之

茶地花樹鳳凰文﨟纈絁の文様染め技法に関する一考察……片岡真純

年次報告

正倉院櫃類銘文集成(二)―慶長櫃・元禄櫃―……飯田剛彦・佐々田悠

正倉院文書にみる筆の諸相―材質を中心に―……杉本一樹

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 まずは、2016年から4か年にわたって実施された、「筆」の特別調査報告が注目されます。現在一般的な毛筆といえば「無芯筆」(毛のみを束ねた穂先)ですが、正倉院に伝わる筆は毛と紙とを交互に巻き固めた「有芯筆」です。その構造や材質を、X線透過写真も活用して詳細に観察し、さらに観察結果をもとに試作筆を製作して、その性能を検証しています。有芯筆は、巻紙のおかげで筆圧を効かせることができ、線の細い・太いを表現するのに優れているとのことで、正倉院に残る書跡からも有芯筆で書かれた痕跡を見出すことができるそうです。荒井論文では、献物帳や雑集などの書跡とともに、諸国から提出された戸籍・正税帳・計帳などの書風にも注目し、地方に残る古い北魏書風に対し、新しい唐代書風が畿内から徐々に広がりつつあることを指摘しているのも、興味がひかれます。杉本論文は、写経所文書の中に登場する兎毛筆・鹿毛筆・狸毛筆について検討し、それぞれの性質や用途、利用のされ方など、様々な側面から古代における筆の実像を明らかにしています。

片岡論文は、標題の文様染めが、﨟纈(ロウケツ染め)でも夾纈(板締め染め)でも纐纈(絞り染め)でもない、第4の技法によっていることを示した上で、中国トルファン・アスターナ古墓群出土品などで確認されている「アルカリ剤印花法」との関連について指摘します。正倉院櫃類銘文集成は第41号に続いて第2弾。今回は江戸時代の開封時に奉納された櫃群に記された銘文が提示されています。古櫃調査の成果をわかりやすく紹介したものとしては、佐々田悠「古櫃が語る正倉院の歴史」(『日本歴史』877、2021年6月号)がありますので、ぜひあわせてご覧ください。

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