そのほか

2023年4月17日 (月)

『正倉院文書目録』九(続々修四)が刊行されました

東京大学史料編纂所編纂『正倉院文書目録』九(続々修四)が東京大学出版会より刊行されました(3月刊、税込定価¥19,800)。

https://www.utp.or.jp/book/b10030144.html

********(以下、編纂担当者寄稿)*********

本冊には、続々修第13~16帙の4帙合計35巻を収録しました。内容は、奈良博目録の分類による第二類(経巻歴名)のうち、「経巻歴名」中・下、「奉請経」上・下です。第13帙・第14帙は、第12帙(「経巻歴名」上)に続いて各種の経巻目録類を集成しています。第15帙は櫃ごとの経巻検定・出納記録、第16帙は奉請経関係の文書・書状・帳簿を多く含んでいます。前者には、櫃等に貼り附けられた痕跡のあるものが何点もありました。

注目される事例をいくつか紹介します。第15帙第4巻裏(一次文書)にある天平勝宝4~6年の4通の奉請文(1通は余白のみで空)は、裏面の墨うつり(左文字)の存在から、もとは継文に編成されていたことがわかり、墨うつりを手掛かりに欠損文字も復原できました。前欠となっている天平勝宝4年11月9日の文書(古25/53~54では「東大寺三綱牒」とする)は、冒頭4行が読み取れた結果、「律供牒」であることが明らかになりました。南都六宗や律宗(衆)の関係史料として注目されます。また、これまで知られなかった(天平勝宝4年)某所経疏論返送文(7行分)の存在も墨うつりから判明しました。

第16帙第8巻は、天平8年9月から玄昉将来経を順次借り出して書写した際の記録「経本請和上所帳」です。続修別集47①裏が抜き取られているほかは、奈良時代以来の貼り継ぎを伝えていると思われます。『大日本古文書』では見落とされたらしい朱書が数箇所あり、書面の日付を特定できたものがあります(古7/68~69の書面が天平9年3月9日付と判明)。当初は各書面を借り出し日ごとに作成し、そのあとで帳に編成された状況など注目できそうです。

2020年6月10日 (水)

東大史料編纂所ユニオンカタログDBに正倉院事務所とのリンクが加わりました

東京大学史料編纂所の日本古文書ユニオンカタログデータベースに、正倉院事務所公開の東南院文書のURLを盛り込みました。
URLを範囲指定して、右クリックして「リンクを開く」を押すと、該当巻子のレコードが開きます。
1点ごとのリンクではありませんので、画像ファイルを送って探して下さい。

画像をクリックすると大きな画面でご覧いただけます 

Union_image_20200610151501

 

2020年1月27日 (月)

直木孝次郎先生『年譜・著作目録』『追悼文集』のご案内

以下のようなご案内をいただきましたので、ご紹介いたします。

                 ⛄

『直木孝次郎先生年譜・著作目録』
『直木孝次郎先生追悼文集』   のご案内

           ― 直木孝次郎先生追悼のつどい世話人会

 このたび、当会編にて、上記の2冊を刊行いたしましたので、ご購入のご案内をいたします。
 『直木孝次郎先生年譜・著作目録』は、直木先生が生涯に書かれた論文・書評・学会動向・新聞記事・学術書紹介・保存運動関係の文章などに加えて、学会報告・研究会報告・講演など、知られる限りを網羅し、年譜事項とともに配列したものです。収録しえた項目数は約2000にも達し、直木先生の全ご業績をほぼ網羅しています。
 『直木孝次郎先生追悼文集』は、ご逝去後に寄せられた多くの追悼文や追悼記事を集成したものであり、各執筆者の直木先生に寄せる思いが伝わってきます。
  以上の2冊に加えて2019年12月21日に行われた「追悼のつどい」の際の講演資料(栄原永遠男・永田和宏)の入手ご希望の方は、下記によりご送金いただければ、ご入金確認ののち送付させていただきます。

              記
  送金額 1370円(代金1000円、郵送用のユーパックライト代370円)
  郵便振替 00940―6―238403
  口座名称 栄原 永遠男  サカエハラ トワオ
    (手数料は各自ご負担をお願いします。)

2019年5月 8日 (水)

『正倉院紀要』第41号が刊行されました

『正倉院紀要』第41号が刊行されました。
http://shosoin.kunaicho.go.jp/ja-JP/Bulletin

                 ☀

目次
金銅銅鐸の製作技法と生産の様相………………………………細川晋太郎
年次報告
正倉院櫃類銘文集成(一)―古櫃―………………………………飯田剛彦・佐々田悠
正倉院の繊維製品と調庸関係銘文―松嶋順正『正倉院宝物銘文集成』第三編補訂 後編
                ……………………………………………杉本一樹

                 ☀

杉本論文は、前号にひきつづき、特別調査「麻」の報告と連動した銘文集成の後編です。全体像をふまえた一覧表とまとめがなされています。
飯田・佐々田論文は、正倉整備工事を契機に調査された総計275合の櫃について、銘文を中心とした調査成果がまとめられています。江戸時代や明治の宝物整理に関わる銘文が多い中、写経所の曹司における経巻や料紙の管理に関わる銘文も見られ、写経所研究の視点からも大変興味深い内容となっています。

2018年1月10日 (水)

「正倉院文書」複製製作クラウドファンディングのおしらせ【終了しました】

世界最古にして最大級 1300年前の文書を未来へ
国立歴史民俗博物館 「正倉院文書」複製製作プロジェクト
2018年1月15日より「Readyfor」にてクラウドファンディングによる支援募集を開始

 

 このたび、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)では、2018年1月15日より、クラウドファンディングサー ビス「Readyfor」にて、「正倉院文書」の複製製作のための支援募集を開始いたします。

 

  今回のプロジェクトは、千葉銀行(頭取 佐久間 英利)と、「Readyfor」を提供するREADYFOR(レディーフォー)株式会社(代表取締役CEO 米良 はるか)の業務提携によりスタートするものです。貴重な文化財の保存と国内外での研究や展示に活用していくことを目的として、奈良県の東大寺正倉院に保管されてきた膨大な「正倉院文書」の精巧な複製を製作するための資金をクラウドファンディングにより調達する計画となっています。

 

 この複製製作は、①資料の保存(現物が劣化した場合に災害時のバックアップとして)、②公開 (実物はほとんど公開できない)、③研究(正確な複製を作っておけば、将来研究方法の進歩により、新しい発見につながる可能性がある)の観点から、大変意義が深いプロジェクトです。

  1300年前の日本最古の紙史料群「正倉院文書」は、東大寺の正倉院に伝えられた、紙史料として世界に類をみない貴重なものです。奈良時代の国家行政 から写経事業、役人の生活にいたるまで、いきいきと語りかけてくる希有な史料です。しかし、実物は年に一度、奈良国立博物館で開催される正倉院展でしかみることができず、万一災害にあえば、これらの過去の記録は失われてしまいます。

 

 本プロジェクトでは、東大寺正倉院に伝来した正倉院文書を国内外に広く公開すること、貴重な文化財を後世に伝えることを目的として、長期間の展示に耐えられる精巧な複製を製作いたします。

 

  世界的にも貴重な史料を、精巧な複製でもっと身近に、万一の災害にも備え、国立歴史民俗博物館では、35年にわたり全667巻5 冊の正倉院文書の内、390巻4冊の複製を製作してきました(文書複製は、残り277巻1冊)。 製作した複製は常設展での展示により、通年を通して閲覧でき、調査研究が可能です。クラウドファンディングにより、今回は「続々修第12帙第8巻」を複製し、複製の早期完了を目指します。

 

【「正倉院文書複製製作プロジェクト ~1,300年前の文書を未来へ~」概要 】
■プロジェクト名:半世紀に渡る歴博の挑戦!正倉院に残された古代の文書を後世へ
■プロジェクトページURL:
https://readyfor.jp/projects/rekihaku1
■目的:正倉院文書全巻(合計 667 巻 5 冊と東南院文書 112 巻を含む)の複製計画のうち、今回は「続々修第12帙第8巻」について、複製(長期の保存・利用、耐久性に優れた原色コロタイプ印刷により実行)を実施する
■掲載するサイト:クラウドファンディングサービスReadyfor(
https://readyfor.jp/
■製作完了予定日:2019年3月末日頃まで
■目標金額:350万円
■支援募集開始時期:1月15日
■支援募集期間:2018年3月30日(金)23時まで (74日間)

 

《複製方法について》 明治時代に写真技術を応用して生み出された複製技術のコロタイプで複製します。コロタイプは、撮影された写真 をそのまま原版とする印刷技法で、自然な濃淡や諧調の表現に優れており、その顔料インキの保存性の高さから、 国宝・重要文化財の絵画や書跡などの複製に利用され、文化財を後世に伝える役割を果たしてきました。

 

チームリーダー 仁藤 敦史(国立歴史民俗博物館研究部教授・総合研究大学院大学文化科学研究科教授(併任))。
コメント:正倉院文書複製事業について、私は歴博へ着任以来、四半世紀以上の間、担当を続けてきました。 その間に、全約 800 巻のうち 300 巻近い複製に立ち会いしました。近年の予算縮減により、全巻完成の目処に赤信号が点っている現在に強い危機意識を持っています。コロタイプ印刷の素晴らしさをご理解していただくとともに、複製事業に皆様のご協力をお願いします。

2017年12月25日 (月)

『正倉院写経所文書を読みとく』が刊行されました

正倉院文書の中心をなす〈写経所文書〉、その入門書が刊行されました。

                        

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市川理恵著 『正倉院写経所文書を読みとく』

同成社、2017年12月発行、4,700円(税別)

http://www.douseisha.co.jp/book/b325181.html

                        

第1章「帳簿の実例」と、第2章「写経事業の紹介」の、2章構成となっています。

第1章では、写経所で用いられる帳簿のパターンをおさえてしまおう、というもの。複雑にみえる帳簿類ですが、基本的な型を理解すればとっつきやすくなります。実際の文書の様子を写真で確認しつつ読み進めることができ、頻出物品についても正倉院宝物から参考図版がふんだんに掲載されていて、イメージしやすく工夫されています。

第2章では、正倉院文書に見られる写経事業の展開過程を、具体的な事業ごとに整理して、個別に紹介していきます。各事業ごとに、その概要を説明する「解説」、関連する史料や便利な先行研究を紹介する「史料」、議論の焦点とされてきた問題点を論じる「研究動向」からなり、写経所文書研究の現在を手軽に知ることができます。

参考文献や索引も充実しており、写経所文書を読みとく際の〈辞典〉としても、活躍してくれることでしょう。

2017年5月 8日 (月)

正倉院文書の研究文献をお探しですか?

2015年より公開中の「正倉院文書マルチ支援データベース」(SHOMUS)ですが、データ数は現在も増え続けており、より便利なツールとして進化し続けています。今回はその中でも「研究文献検索」についてご紹介しましょう。
2017年4月現在で、360論文、累計4万2千件以上のデータが公開されています。今後も随時更新予定とのことです。

                          

「正倉院展で見たアノ巻物の中の、アノ文書について調べてみたいけど、どの論文を見ればいいのかな?」
そういう時に役立つのが「研究文献検索」です。「アノ文書」に言及している論文と、その言及箇所について、ピンポイントで教えてくれる優れものです。

東京大学史料編纂所ホームページ
(データベース検索→〔史料の所在〕正倉院文書マルチ支援データベース)
http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/shipscontroller

画面上方にある「研究文献検索」のボタンを押してみましょう。

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たとえば「続々修第3帙第1巻に関する研究論文」を調べたいと思ったら、【類別】欄で「続々修」を選び、【帙巻】欄に「0301」と入力して、【検索】をクリックします。

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すると、続々修第3帙第1巻に言及する論文の一覧が出て、論文中のどのページに記載があるかまで知ることができます。項目検索と組み合わせることで、さらに「この巻物の中のアノ文書」など、細かく対象を絞っていくことができます。
ぜひ一度お試しください!

2017年4月24日 (月)

『正倉院紀要』第39号が刊行されました

『正倉院紀要』第39号が刊行されました。
http://shosoin.kunaicho.go.jp/ja-JP/Bulletin 

                 

目次
正倉院南倉の銀壺について……………………………吉澤 悟
正倉院宝物の機器分析調査…………………………成瀬正和
年次報告
手実と端継―正倉院文書の成り立ち―………………佐々田悠
いわゆる因幡国戸籍の成立と伝来……………………渡辺晃宏

                 

 正倉院文書に関する論文が2本掲載されています。渡辺論文は因幡国戸籍についての詳細な観察報告です。内側に折られていたことや身分変動に伴う追記の意味を明らかにし,この帳簿が計帳歴名の原簿として「計帳の日」の人身把握に用いられた可能性に言及します。律令公文の新たな研究として注目されます。佐々田論文は手実帳の形態観察をもとに文書の成り立ちを考察したものです。手実にはかなりの割合で端継が転用されていて,巻末の端継は書写後に剥がされて経師の手実に,巻首の端継は最後の装丁段階で切断されて,案主によって帳簿に再利用されたことを論じています。人身把握と帳簿のあり方,写経行程と反故紙の発生など,古代の実情に迫るものとなっています。

 そのほか,吉澤論文は巨大な銀壺の技法や狩猟文について考察,日本製である可能性を指摘しています。成瀬論文は機器分析による科学的調査の内容と歩みを分かりやすく解説しており,近年の古文化財調査の手法を知る上でも必読です。
 年次報告では鳥毛篆書屏風や吹絵紙,最勝王経帙についての調査結果が示されています。

2016年7月 6日 (水)

『正倉院文書の歴史学・国語学的研究―解移牒案を読み解く―』が刊行されました

正倉院文書のなかでも、もっとも難解な解移牒符案の論文集がでました。

 

                      

 

栄原永遠男編『正倉院文書の歴史学・国語学的研究―解移牒案を読み解く―』
和泉書院(日本史研究叢刊30)
2016年6月25日発売
ISBN:978-4-7576-0803-0 C3321
定価(税込)¥13,500

http://www.izumipb.co.jp/izumi/modules/bmc/detail.php?book_id=129083&prev=new

 

 

 

                      

 

目次
序―扉をすこし開けたこと―(栄原永遠男)
天平宝字期の解移牒案について(山下有美)
桴工達の訴え―下道主の文書作成の苦心―(中川ゆかり)
正倉院文書における文末の「者」(桑原祐子)
「并」字の使用法から文字の受容・展開を考える―「並」「合」との比較から―(方国花)
解移牒符案にみえる訂正方法とその記号について(井上幸)
正倉院文書における督促の表現―「怠延」を中心に―(根来麻子)
古代日本独自の用法をもつ漢語―「返却」「却還」「還却」「解却」―(宮川久美)
写経生の任用について(濱道孝尚)
正倉院文書にみえる浄衣(渡部陽子)
天平初期の帳簿―解移牒符案の源流を求めて―(栄原永遠男)
あとがき(桑原祐子)

 

                      

 

 

 

 

 

 

 

山下有美氏は天平宝字期の五通の解移牒案を詳細に比較・検討し、作成の経緯や目的を論述します。栄原永遠男氏は天平初期の帳簿の構成や作成の目的を検討し、天平宝字期の解移牒符案にどのように受け継がれたかを追究しています。
国語学からは、方国花氏が「并」字、井上幸氏が訂正符、根来麻子氏が「怠延」、宮川久美氏が「返却」「却還」「還却」「解却」の用法を調べ、その意義を論じています。また中川ゆかり氏は「偁」が「款」と訂正された理由を、桑原祐子氏は「文末の者」が使われた意味を検討しています。
歴史学からは、濱道孝尚氏が「試字」と貢進文から写経生の任用について考察し、渡部陽子氏が浄衣の支給と返却、その縫製や洗濯について細かく論述しています。

2016年3月31日 (木)

『上代写経識語注釈』(上代文献を読む会・編)が刊行されました

上代文献を読む会編『上代写経識語注釈』が刊行されました。

                       

『上代写経識語注釈』

上代文献を読む会編(稲城正己・井上幸・遠藤慶太・大江篤・影山尚之・桑原祐子・辻憲男・廣岡義隆・宮川久美・村瀬憲夫・李瑩瑩・Bryan Lowe)

勉誠出版 2016年3月刊 ISBN 978-4-585-22138-8
A5判  704 頁  14,040円(本体13,000円)

 http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100569

                       

『奈良朝写経』収載経巻の識語について、個別に訓読と現代語訳・注解、および問題となる事項についての詳しい補説が集成されています。正倉院文書研究の成果をふんだんに取り込んだ注解・補説により、写経所の活動がその産物としての経巻を通して生き生きと蘇ってきます。

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