『正倉院紀要』第40号が刊行されました
『正倉院紀要』第40号が刊行されました。
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目次
正倉院宝物特別調査 麻調査報告
………………………………増田勝彦・ひろいのぶこ・岡田文男・有吉正明
年次報告
正倉院の繊維製品と調庸関係銘文―松嶋順正『正倉院宝物銘文集成』第三編補訂 前編
……………………………………………杉本一樹
月借銭解に関する基礎的考察……………………栄原永遠男
正倉院文書に関する論文が掲載されています。栄原論文は、宝亀年間の月借銭解を関係資料も含めて網羅的に検討した研究報告です。原本の詳細な観察を踏まえて、個々の月借銭解がどのように事務処理され、反故となり、さらに現状の姿に整理されたのかを、具体的に明らかにした成果として注目されます。奉写一切経所の案主であった上馬養の強い勧誘によって、ほとんどの写経生が月借銭を借りていたとの想定も示されています。
杉本論文は、特別調査「麻」の報告と連動した銘文集成の最新版です。麻布に記された銘文を新たに調査・検討した成果として、新規の釈文や読みの訂正が見られます。また、銘文の部位の記述に力が注がれているのが特徴です。部位は文字内容を理解する上で欠かせず、貴重な情報と言えるでしょう。
そのほか、年次報告では腹内に「乙亥之年」との墨書を有する金銀平文琴や、吹絵紙、木札の付属する薬袋、経帙などについての調査結果が示されています。